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千葉県辺りで同人誌とか描いてる黒井ちゃっこのどうでもいい事す
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お嬢様とアルフレッド 

「お嬢様、何処に行かれるのですか?」
年齢のワリに低く、落ち着いた声が響く
「どこって抜け出すのよ!」
勉強部屋の窓に足をかけて飛び出そうとする
大丈夫ここは高くない
踏ん張って窓サッシを蹴りつける瞬間
「止めて下さい」
すっと手を回しお嬢様抱っこされる私
「もう!離してよー!」
じたばたと暴れてやる
また失敗したわ

落ち着いた声で言う
「お嬢様、聞いてくださいお嬢様
今学んでいる事はお嬢様にとってとても大切で、この先必要不可欠な知識になります
それを一時の気持ちでかまけて疎かにしてはなりません
あとできっと後悔します、あの時私の言うとおりにしておけばよかった、と」
スラスラとそんなむかっとする事を言う
「うるさいうるさいうるさい!
私は今!ここを抜け出して!遊びたいのよ!」

きっと私の頭から機関車みたいに煙でも出てるんじゃないだろうか
それくらいちょっと怒っている
「もうガマンならないわ!
一体いつまでこの部屋であなたと勉強し続けなければいけないの!?
かれこれ4時間よ?その間1時間に15分の休憩を挟んだだけで4時間よ?
頭が可笑しくなりそうだわ!」
ぷんぷんに怒って鼻先の執事に言ってやる

アイツは表情を壊さずにこやかに
「お嬢様、一般的にお嬢様位の年齢の女性は日にそれ位のお勉強はしているものです
それを怠るのは当シュヴァインシュヴァルツ家の」
遮るように、というか遮ってやったわ
「わーたーしーは!家の面子とか!下々の一般的な学問に興味は無いわ!
自分の欲求に素直なだけの普通の女だわ!」
言ってやったわ、ああスカっとした
言われた本人は複雑な表情をしているけど、そんなの私には関係ないわフフン

「お嬢様、お気持ちは分かりますがどうか席についてくださいませ」
しれっとそんな事を言う
勿論座らないわ、座るって事は納得してまた勉強を続けるって事だもの
「ねえアル、私は座らないわ
だって座ったらあなた、また私を勉強地獄に引き込むつもりでしょう?」
「勿論です」
メガネを中指で直す
イヤだわ、メガネが怪しく光ってる
絶対に座ってなんかやらないんだから

「座る座らないは別として、お嬢様どうぞ後ろを向いてくださいませ」
「何よ・・・?」
「メアリー?」
そこには騒ぎを聞きつけたのか髭をひくつかせたお父様がいらっしゃいましたわ
それは心底はらわたが煮えくり返った様相でおられました

・・・お父様ったら、私が何度も御免なさいを言っても聞いてくれないんだもの
あれじゃあウマの耳に念仏だわ
全く人の話は聞くものよ、人間なんだから
全く誰に似たのかしら、お爺様かしら
「はあ、言われの無いお叱りを受けたわ」
げっそりして自室に戻ろうとしたらアイツが待ち伏せていた
「何よアル、また勉強?」
ニッコリと
「いえ、本日は終いでございます
お嬢様はよく勉強に励んでおられました
この続きはまた明日ということで」
「・・・明日もやるのね」
「無論です」
礼儀正しくお辞儀をするアル

「私、魔術なんて興味ないのよ、体動かしている方が好きだわ」
「そう仰らないでくださいませ、魔術は貴族の嗜みでございます
幼少より慣れ親しむことで貴族としてのレベルも上がります
どうか旦那様のお心遣いをご理解下さいませ」
「・・・別に、アンタを責めてる訳じゃないわよ」
あんまりにも謙ってくるから気持ち悪いじゃない
「先ほどのお嬢様の仰っていた事なのですが
確かに椅子に座って4時間はお辛いかと思いますし、明日からは体を動かす授業もさせて頂きます
無論講師は僭越ながら私がさせて頂きます、担当の者が不在でございますので」
「そう?それなら気晴らしに良いわ
ちなみにやる時間はいつ?最後でも最初でも良いのよ
でもできれば真ん中にして欲しいわね、鬱憤が溜まる頃だし後の勉強が捗るわ」
「それは明日、また決めさせて頂きます
さてお嬢様、お食事の時間でございます7時の鈴が鳴りました」

ごぉん、ごぉんと七回鐘が鳴る

「いってらっしゃいませ、お嬢様」
「ええ、アルも」
気配でアルがお辞儀するのがわかる
何年も傍に居るからそんなどうでもいいことまで把握してしまう自分に辟易する
この鳴り続けている鐘の音
アルはずっと「鈴」と言っているけど、どう聞いても鐘だわ
一体どういう耳をしているのかしら
耳に残る鐘の音を反芻しながら長い廊下を歩く
まったく広い敷地も考え物だわ

カツリカツリと、ヒールの音だけが廊下に響く
シュヴァインシュバルツ家はいつも平和だ
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