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くろいぶろぐ

千葉県辺りで同人誌とか描いてる黒井ちゃっこのどうでもいい事す
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寓話御伽噺「眩暈姫」(加筆修正) 

眩暈姫

むかしむかし、ある国にたいそうきれいなお姫様がいました。
お姫様は生まれつき体が弱く、めまいによく襲われます。
最近ではそれを理由にして
少し嫌な事や面倒な事があるとすぐに「ああ、めまいがするわ」と言い
それらの面倒事をしませんでした。

その事もあってか、御付の者や王様までもがお姫様の事を「めまい姫」と呼ぶようになりました。

ある日、めまい姫がお供を引き連れていつもの散歩に出かけました。
毎日毎日同じ道を歩く事に、お姫様は飽き飽きしていた
そんな折、お供が目を離した隙にめまい姫は森の中へ走り出しました。
まんまと逃げ切っためまい姫は、今まで見た事も無いような草や花、虫を見て喜びました。

しかしだんだんと日が暮れてきて、森に闇が近づいてくるとお姫様は怖くなってきました。
広い森をあてども無く歩き、迷い、とうとう疲れてその足を止めたのです。
とっぷりと夜の森を一人ぼっちでめまい姫。
雲に見え隠れする月を見て言いました。

つきよ つき
わたしをお城にかえしておくれ
つきよ つき
この意地悪な夜闇を取り払っておくれ

月は言いました。

めまい姫、めまい姫
あなたをお城にかえしましょう
意地悪な夜闇を明るくてらしましょう
めまい姫、めまい姫
つぎにあなたは「ああ、めまいがするわ」といってください
あなたの願いをかなえましょう

めまい姫はいいました
「ああ、めまいがするわ」

次の瞬間、お姫様はちょっとだけ眩暈を感じて目をこすると
お城にいました。
そこにはめまい姫の帰りを待っていた王様とその従者が居ました。
そこには意地悪な夜闇もひとりぼっちの寂しさもありませんでした。

また別の日
めまい姫はお忍びでとなりの国までお供をつれていきました。
その途中、盗賊に教われました。
かわいそうなめまい姫、目の前でお供が殺されて次は自分の番
その時、白刃が盗賊たちを打ちのめしました。
そこには白い剣を持った白馬の王子様がいます。

王子は言います。
「あなたがめまい姫か、ここは危険だ、そうそうに立ち去れい」
めまい姫は王子の姿を目に焼きつけて、生き残った供を連れて国に帰りました。

その日からめまい姫は白刃の王子様の事しか考えられなくなりました。
めまい姫は満月の月に語りかけました。

つきよ つき
あの王子様はどこの王子様?
つきよ つき
あの王子様をわたしへ振り向かせて

月は言いました。

めまい姫、かわいそうなめまい姫
となりの国の王子様 王子様には許婚がいる

つきよ つき
王子様を私だけのものにしたいの
つきよ つき
私だけの王子様にしておくれ

月は言いました

おお、かわいそうなめまい姫 めまい姫
王子様をあなただけのものにしましょう。
明日の朝いちばん、にわとりがないたらすぐに 「ああ、めまいがするわ」といいなさい
明日の昼ちょうど、パンの焼ける匂いがしたら「ああ、めまいがするわ」といいなさい
明日の夜、私が空の中心に来たとき「ああ、めまいがするわ」といいなさい
かわいそうなめまい姫
あなたの願いをかなえましょう

次の朝、めまい姫はにわとりが鳴いてすぐに「ああ、めまいがするわ」と侍女に言いました。
ちょっと眩暈を感じると、昼前に王子様の許婚が倒れました。

お昼ちょうど、パンの焼ける匂いがしてすぐに「ああ、めまいがするわ」と王様に言いました。
立てなくなるような眩暈を感じると
おやつの時間、早馬に乗った王子様がお城に来て めまい姫に結婚を申し込みました。

星が輝く夜の空、月が中心に来たとき「ああ、めまいがするわ」と空に言いました。
そのまま めまい姫はベッドに倒れ朝になっても目を覚ましませんでした。

 次にめまい姫が目を覚ましたのはおばあさんになってから。
若くて美しかっためまい姫は、しわだらけ。
毎日つきそっていた白刃の王子様は疲れ果て
とうとうめまい姫のとなりで死んでしまいました。

めまい姫は言いました。

つきよ つき
なぜわたしはおばあさんなの?なぜおうじさまはしんでいるの?
つきよ つき
あなたはなんて ひどいつき

つきは何もいいません

「ああ、めまいがするわ」
そのまま めまい姫は死んでしまいましたとさ。
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断片反芻「黒の址」 

公園沿いの桜は、雨に濡れ輝いて
それは足を止めるのに十分な理由だった
脇を通り過ぎる車のヘッドライトが、時折木々を眩しく映し出し
一瞬、脳裏と網膜に反転した桜が焼きつく

季節はもう4月だった
あれからまだ10ヶ月しか経っていないのかと、そう思うと複雑な気分になる
勿論4月だからといって浮かる気分ではないし、あの頃よりかは少しだけマシになった精神状態も
そんな季節の移り変わりを重ねる毎に薄れるのかと思うと酷く嫌になる
だからあの時の約束は絶対に忘れない、守り続ける
守れなかったあいつの為に、何も出来なかった自分の戒めに

―――ただ、綺麗だなと思った
そういえばあいつは桜を見た事があるのだろうか
施設にでも植えてあったら見れていたかも知れないけど
大方あの小さい部屋に隔離されて外出する事なんて出来なかっただろう

ふつふつと怒りが湧き上がってくる
その矛先は次第に自分へと向かう
何故、あの時救えなかったのだろう
いやそんな事を思うのもおこがましい
自分には何の力も無かったし、状況を脱する何かを持ちえていた訳でも無い
見ている事しか出来なかった
血塗れで、冷たくなる体を抱きしめて絶望するしかなかった
微笑んで頬に触れてくれた指の感触を思い出す
呼びかけても呼びかけても返事を返さないあいつを

本当にただ、抱きしめるしか出来なかった

10ヶ月経った今でも感触すら鮮明に思い出す
この組織に身を置いてから色々な事があって、これからも様々な事が起こるのだろう
今は違うはずだ
あの頃の、無力感に苛まれていた自分ではないはずだ。

誰も居ない公園をただ歩く
点々と灯る常夜灯があの頃と変わらない姿のままそこに在る
東屋のベンチに腰を下ろすと、視野には桜の木々が広がる
霧雨が穏やかに体を包むと月が朧げに姿を現した
俺は中空に手を伸ばし掴める筈の無いソレを納める

―――びゅうと風が凪いだ
雲が薄くなる、この調子なら明日は晴れるか
目を閉じると瞼の裏から暖かな光が薄く届く
大きく息を吸いこみ、吐き出す
少しだけの逡巡

ベンチから腰をあげると目の前に一枚の花弁が流れてきた
それを無意識に掌に乗せた
いつか絶対に桜を見せよう
そしたらあいつは子犬みたいに喜ぶだろうな
コートのポケットにそれを仕舞い歩き出す

4月の夜
黒の址
遠くでカラスの鳴声が聞こえた
 

ショートショート「待ち合わせの間」 

うう、寒い
もう四十分も待ってるのに、ヤツは一体どういうつもりなんだ
そもそも待ち合わせの度に毎度毎度遅刻してくるヤツなんてあいつくらいだ
寒風吹き荒ぶ1月6日
出来るだけ早いうちに初詣に行きたいと言い出してから、何だかんだと6日が過ぎ
あいつの誘いを待っていた私は、痺れを切らして自分から誘ってしまった
今が華、4月には高校二年
そんな新年だ
大体行きたいと言ったのはあっちなのに、なんでこっちから誘ってしまったんだ
あの時の私め
駅前の階段、その脇にあるベンチで私は今か今かと体を震わせながら待ち続けている
勿論この寒いのに座ってなんかいられない
出来るだけ陽光の射し当たる所でポケットに手を突っ込み、足踏みをしながらきょろきょろと辺りを見回している

なるほど
6日ともなると駅前はそれなりに人の往来があり、車も走る
明日になれば仕事始めが待っている社会人の皆様方は、本日を120%満喫しようとでもいうのか
妙齢の方から耳元が寒々しいフレッシュマンが奥様、あるいは彼女を連れどんどん目の前を通り過ぎていく
別に悔しくなんか無いけれど、駅前を一人で待ち続けるのはひどく心細いものだ
誰かを待つのがそれほど好きではない私がよくもまあ、あいつを律儀に待っているものだ
我ながら感心してしまう
時刻は12:50
さて、待ち合わせは12時きっかりのはずだったのだが
一向に来る気配が無い
携帯電話の一つも持っていればいいのだけど、生憎持ちえていない私は
近頃めっきり姿を消してしまった公衆電話を探す事にした。

 まったく、文明というのは便利になるだけなって
それについてこない人間に対しては非常に冷酷な物なんだな
年配の方やそういうのが嫌いな私に対して喧嘩を売っているとしか思えない
ぶつぶつと、ようやっと見つけた公衆電話に入る。
駅前から少し離れてしまったが、あるだけ良かったと思うしかない
電話ボックスの中は心なしか暖かく感じ、ポケットから出した手がじんわりと熱を持っていく。
カバンからアドレス帳を取り出しそれほど乗っていない住所録から
今も尚絶賛遅刻中の遅刻魔人 遠薙瑞樹を探し電話をかける。

公衆電話にもいくつか種類、というか緑色と灰色の筐体の2つがあって
今かけてるのは緑色の古いタイプの電話だ
個人的には緑色のヤツが一番好きなのだけど、灰色のちょっとハイテクなのも琴線に触れてしまう。
なんたってあの音声を大きく出来る機能が素晴らしいし、画面に通話可能時間の概要が表示されるのも親切だ
灰色の電話が出来てすぐ、私はそれが使えなかったのだが
その多機能さに感激したものだ。

しかしながら、私の友人の一人は携帯電話持てばいつでも電話できるんだよ
明日の用事とか全然わかるんだよ!と言って聞かない
私にとっては用向きが無ければ電話などしないし、それを常時携帯するというのは考えられない
それでさえ私達は学生だ、土日を除けば翌日会える
大切な用事ならばこそ対面で言うべきだし、それを取り次ぐ為の手段としての電話ではないだろうか。
気軽にヒマだから電話をする、というのは全く持って理解できない。
ましてやメール等に絵文字なんて有り得ない
接頭接尾、至る所に可愛らしい猫や動物の絵文字を入れ
文字と記号を組み合わせては一字とする、一種暗号めいた組み合わせの文字列で私達の年代は意思表示の一つとして用いている
君らは何だ、警察の暗号試験でもやっているのか
友人のメールを興味本位で見せてもらったが、その時は猛省した
しかも男からのメールだ、全く持って頭痛と吐き気を催す。

一昔前のポケベルだって我が姉様は「面倒臭い!」と放り投げていたし
私にも幾ばくかその血液が流れているのだろう

さて、3回目の留守番電話に繋がった
前二回はメッセージを入れる前に切ってしまったが、今回は入れてみようと思う。
「ピーという発信音の後にメッセージを入れてください ピ―――
私だ、今日の予定は一体何時だったか覚えているか?待っているから早く来い」
必要な事だけでいい、それで分かるのだから。
ガチャと受話器を置き、冷え切った指先を温める
扉に手をかけ電話ボックスを出る。
時刻は13:04
徐々に日が落ちていく最中の、まだぎりぎり暖かい時間
これがあと3時間も経ったら寒くて私は動けなくなる
相変わらず強めの風が吹く最中
てくてくと駅までマフラーを直し直し向かう
ともすればこんな時間から雪が降りそうな寒々しい気温の中、よくも私をこんなに待たせてくれるものだ
通り過ぎる人々はやっぱり何か楽しそうに見えて、少し悔しい
早く来ないものだろうか、まさか何かあったのではないだろうか
家族の何某かが事故で、瑞樹が付き添いで行ったのかもしれないし
前方不注意のアイツだ、ここに来る途中車にでも撥ねられてしまったかもしれない

・・・非常に心配になってきたぞ
もし仮に良くない事態が起こっていて、ここでぼーっと待っているのは
非常になんだ、その間抜けだ
しかし全く違うかもしれない、ただ単にいつもの遅刻なのかもしれないし
こうやって考えているのが只管に杞憂であるかもしれない
むしろその方が良い

否定と肯定をぐるぐると繰り返していくうちに頭がぼーっとしてきた
まったく、なんでこんなに考えさせるんだ
そもそもあいつから告白してきたってのに、今じゃあ立場が逆転してるのがいやらしい
ぐぬぬ、私の計画がっ
あいつが来て開口一番何を言ってやろうか
恨み辛みを小1時間程隣で言ってやってもいいし
あえて無言で隣を歩くのも良いな
うん、ちょっと楽しくなってきたぞ

曇りと晴れを交互に繰り返し、やがて空から小さくて淡い雪がゆらゆらと落ちてきた
とうとう降ってきたか
そう言っている傍からひらひらとふわふわと、その数を増してきた
私は降り注ぐその一つを掌に乗せる
雪の結晶が見えればいいのに
そう思った矢先、私の体温でそれは融け失せてしまった
「はぁ」
溜息までも白く、往来の人々はいつの間にかその姿を消していた
そしてとうとう私以外誰も居なくなってしまった
待ち合わせはここ、時間は1時間と20分前
深々と降り注ぐ雪でどうしようもなく凍える
帰ろうという気は微塵も無い
だからといってここを動くつもりも無い
もう一度大きく息を吐く
雪と同じくらい白い溜息が漏れる
空を見上げたら鈍い色の青が泣いているように思えてきた

まったく、泣きたいのはこっちなのに。

不意に、遠くで何かが転倒したかのような衝撃音が聞こえる
やれやれ
次いで自転車を起こし、こちらへ走りよって来る影一つ
そんなに急がなくていいのに
クスと笑ってしまう
息を切らせてごめん、なんていう
息継ぎで全く言えてないけど、きっとそう言っているんだな
まったく男のクセに情けないぞ、そんなに急がなくても
私はいつでも待っているのに
瑞樹は呼吸を整えてもう一度「ごめん」とちゃんと目を見て言った
それが嬉しくて、少しこそばゆい
無言のままの私を見て、子犬のような目で私を見てくる
うん、やっぱりいいなこういうの
瑞樹は私の言葉を待っている、多分どう言うかも分かってると思う

―――さあて、なんて言ってやろうかな。
 

お嬢様とアルフレッド 

「お嬢様、何処に行かれるのですか?」
年齢のワリに低く、落ち着いた声が響く
「どこって抜け出すのよ!」
勉強部屋の窓に足をかけて飛び出そうとする
大丈夫ここは高くない
踏ん張って窓サッシを蹴りつける瞬間
「止めて下さい」
すっと手を回しお嬢様抱っこされる私
「もう!離してよー!」
じたばたと暴れてやる
また失敗したわ

落ち着いた声で言う
「お嬢様、聞いてくださいお嬢様
今学んでいる事はお嬢様にとってとても大切で、この先必要不可欠な知識になります
それを一時の気持ちでかまけて疎かにしてはなりません
あとできっと後悔します、あの時私の言うとおりにしておけばよかった、と」
スラスラとそんなむかっとする事を言う
「うるさいうるさいうるさい!
私は今!ここを抜け出して!遊びたいのよ!」

きっと私の頭から機関車みたいに煙でも出てるんじゃないだろうか
それくらいちょっと怒っている
「もうガマンならないわ!
一体いつまでこの部屋であなたと勉強し続けなければいけないの!?
かれこれ4時間よ?その間1時間に15分の休憩を挟んだだけで4時間よ?
頭が可笑しくなりそうだわ!」
ぷんぷんに怒って鼻先の執事に言ってやる

アイツは表情を壊さずにこやかに
「お嬢様、一般的にお嬢様位の年齢の女性は日にそれ位のお勉強はしているものです
それを怠るのは当シュヴァインシュヴァルツ家の」
遮るように、というか遮ってやったわ
「わーたーしーは!家の面子とか!下々の一般的な学問に興味は無いわ!
自分の欲求に素直なだけの普通の女だわ!」
言ってやったわ、ああスカっとした
言われた本人は複雑な表情をしているけど、そんなの私には関係ないわフフン

「お嬢様、お気持ちは分かりますがどうか席についてくださいませ」
しれっとそんな事を言う
勿論座らないわ、座るって事は納得してまた勉強を続けるって事だもの
「ねえアル、私は座らないわ
だって座ったらあなた、また私を勉強地獄に引き込むつもりでしょう?」
「勿論です」
メガネを中指で直す
イヤだわ、メガネが怪しく光ってる
絶対に座ってなんかやらないんだから

「座る座らないは別として、お嬢様どうぞ後ろを向いてくださいませ」
「何よ・・・?」
「メアリー?」
そこには騒ぎを聞きつけたのか髭をひくつかせたお父様がいらっしゃいましたわ
それは心底はらわたが煮えくり返った様相でおられました

・・・お父様ったら、私が何度も御免なさいを言っても聞いてくれないんだもの
あれじゃあウマの耳に念仏だわ
全く人の話は聞くものよ、人間なんだから
全く誰に似たのかしら、お爺様かしら
「はあ、言われの無いお叱りを受けたわ」
げっそりして自室に戻ろうとしたらアイツが待ち伏せていた
「何よアル、また勉強?」
ニッコリと
「いえ、本日は終いでございます
お嬢様はよく勉強に励んでおられました
この続きはまた明日ということで」
「・・・明日もやるのね」
「無論です」
礼儀正しくお辞儀をするアル

「私、魔術なんて興味ないのよ、体動かしている方が好きだわ」
「そう仰らないでくださいませ、魔術は貴族の嗜みでございます
幼少より慣れ親しむことで貴族としてのレベルも上がります
どうか旦那様のお心遣いをご理解下さいませ」
「・・・別に、アンタを責めてる訳じゃないわよ」
あんまりにも謙ってくるから気持ち悪いじゃない
「先ほどのお嬢様の仰っていた事なのですが
確かに椅子に座って4時間はお辛いかと思いますし、明日からは体を動かす授業もさせて頂きます
無論講師は僭越ながら私がさせて頂きます、担当の者が不在でございますので」
「そう?それなら気晴らしに良いわ
ちなみにやる時間はいつ?最後でも最初でも良いのよ
でもできれば真ん中にして欲しいわね、鬱憤が溜まる頃だし後の勉強が捗るわ」
「それは明日、また決めさせて頂きます
さてお嬢様、お食事の時間でございます7時の鈴が鳴りました」

ごぉん、ごぉんと七回鐘が鳴る

「いってらっしゃいませ、お嬢様」
「ええ、アルも」
気配でアルがお辞儀するのがわかる
何年も傍に居るからそんなどうでもいいことまで把握してしまう自分に辟易する
この鳴り続けている鐘の音
アルはずっと「鈴」と言っているけど、どう聞いても鐘だわ
一体どういう耳をしているのかしら
耳に残る鐘の音を反芻しながら長い廊下を歩く
まったく広い敷地も考え物だわ

カツリカツリと、ヒールの音だけが廊下に響く
シュヴァインシュバルツ家はいつも平和だ
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